コラム
機械式駐車場問題を考える

第49回:危機の時代に選ばれる平面化

はじめに|危機の時代に求められる視点

地震や豪雨災害、建材価格の高騰や人手不足など、私たちの暮らしや建物を取り巻く環境は、かつてないほど不安定になっています。
こうした危機の時代において、社会全体の関心は「新しく建てる」から「いまある建物をどう守るか」へと大きく移りつつあります。

その答えの一つが、機械式駐車場の平面化です。
単なる駐車場の改修工事ではなく、建物を護り、未来に残すための選択肢として、いま注目されています。

残すもの vs 見直すもの

危機の時代の選択

経済や社会が不安定な状況にあるとき、人々は「何を残し、何を見直すか」を判断する必要に迫られます。
高額な管理費や修繕費を要する機械式駐車場は、将来に残すには適さず、役目を終えた設備だといえるでしょう。

一方で、建物本体やその耐震性は、未来にわたって残すべき大切な資産です。
「残すもの」と「手放すもの」を冷静に整理する視点が、危機の時代にこそ求められています。

機械式駐車場という負担

多くのマンションやビルに残る機械式駐車場は、稼働率の低下に加え、維持管理コストが重くのしかかっています。
暮らしや建物の将来を考えれば、こうした仕組みは見直すことで負担を軽くできるものといえます。

平面化の必然性

コスト削減と建物保全の両立

機械式駐車場の平面化は、「見直すものを手放し、大切なものを残す」という考えを具現化した工事です。
ノムラはここに耐震補強を組み合わせることで、単なる駐車場改修ではなく、建物全体を延命し、まちの安全につなげる投資へと昇華させています。
これは第47回で述べた「建物を護る=まちを守る」という想いを、具体的な技術で形にしたものです。

また、施工に用いるH形鋼の選択も非常に重要です。
第48回で触れたように、RH形鋼は「永続性」を重視する選択です。
H
形鋼は一度設置すれば、原則として交換することはありません。だからこそ、最初の選択が建物の未来を大きく左右します。
「補修で対応する」のではなく、最初に何を選び、どう取り付けるかが重要なのです。

さらに、第42回で示したように、ノムラの「マルチステージ」は厚みのある溶融亜鉛メッキや独自の金具構造により、平面化後に定期的なメンテナンスを必要としない設計を実現しました。
加えて、規格材を用いているため、将来にわたって資材の入手や交換対応がしやすく、住民御自身が建物を維持できる仕組みになっています。
 
<出典>
第42回:機械式駐車場平面下の注意点|鋼製床のメンテナンスの矛盾
第47回:機械式駐車場の平面化とは「まちづくり」
第48回:機械式駐車場の平面化における持続性と永続性の違い

全ての平面化が永続性を叶えるわけではない

注意すべきは、すべての平面化が永続性を叶えるわけではないという点です。

第7回第27回で触れましたように、安易な固定化や不用意な埋め戻しは、建物に新たなリスクを抱えさせる可能性があります。
また、第40回で示しましたように、機種やピットの条件を無視した施工は、かえって建物本体に負担を与えることもあります。

さらに、第43回で指摘しましたように、平面化の中には「交換工事や定期的なメンテナンスを前提とした仕組み」も存在します。
これでは永続性ではなく、持続性にとどまるにすぎません。
特注部材に依存していれば、供給が途絶えた途端に持続性すら維持できなくなるリスクもあります。

真に永続性を叶える平面化とは、「建物を護る」という想いに基づき、一度きりの選択で長く安心を残せる構造を実現することです。
ノムラの平面化は、規格材を活用し、住民御自身が未来にわたって建物を守れる仕組みを備えています。
これは単なるコスト削減ではなく、資源を大切にしながら建物を長持ちさせる、思いやりのある選択でもあります。
 

合理的な未来への選択

危機の時代においても、人は建物の中で暮らし、働き続けます。
社会がどのように揺れ動いても、人の暮らしと営みを支える建物は残り続けます。

だからこそ、ノムラは「平面化+耐震補強」という選択肢を提案し続けています。
それはコスト削減の手段にとどまらず、永続性のある建物を未来に残すための、やさしく合理的な選択です。
その想いは、やがて「まちづくり」へと広がっていきます。
 
<出典>
第7回:機械式駐車場撤去・平面化工事の種類と特徴
第27回:建物を危険にさらす機械式駐車場の平面化
第40回:機械式駐車場の平面化ガイド:機種別解説と注意点
第43回:機械式駐車場平面下の隠れた費用とリスク|平面化で公開しない為の手引

まとめ|危機の時代にこそ求められる視点

私は経済の専門家ではありません。
けれど、素人目線でもはっきりわかるシンプルな真理があります。

それは、「危機の時代こそ、建物を守り、無駄を減らすことが大切だ」ということです。

ノムラの平面化「マルチステージ」は、このシンプルな判断をやさしく、そして合理的に実現する方法です。
「残すべきものを残し、役目を終えたものは手放す」 ——その判断を支えてきたのが、ノムラが積み重ねてきた想いと、人間味のある技術です。

だからこそ、平面化は危機の時代にこそ選ばれるのです。
 
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三