第45回:機械式駐車場跡地の再利用|都心のガレージ
放置された機械式駐車場をガレージとして再生
はじめに
あの頃にワクワクした “秘密基地 ”を大人になってからもう一度体現してみませんか?
大人になって、お金にも余裕ができ、今でも子供のように遊び心がある大人達はキャンプや釣り、サーフィンやスキー等の趣味を存分に楽しんでいると思います。特にクルマは大人の代表する遊びのアイテムの一つではないでしょうか。
しかし、欲しい車や趣味の道具は揃えられたのに、それらを保管する場所の確保は現実問題として存在します。特に、都心にお住まいの方の場合は、「駐車スペースと趣味の道具を一緒に保管する」となるとハードルが上がります …
「せっかく欲しいモノは手に入ったのに、保管する場所がない …都心に住んでいるので、近場に車と趣味の道具を一緒に保管できるような “ガレージ “はなかなか見つからない …」
「都心で車と趣味の道具を一緒に保管できるガレージがあれば…」。この願い、何とかなるかもしれません。
今回は都心で放置され使われなくなった機械式駐車場を再利用した、 “都心のガレージ ”についてご紹介致します。
都会に多く存在する、放置され使われなくなった小規模機械式駐車場
このような背景には、都心のワンルームマンションにおいて、住居人が車を所有している方が少なく、電車やバスなどの公共交通機関を利用しているケースが上げらます。更に、使われていない機械式駐車場を外部に貸し出すにしても、機械式駐車場に停められる車の重量や大きさの制限があり “貸し出せる車両が限られる ”問題があります。
昨今人気のミニバンや SUV車両、車重の重い電気自動車等は機械式駐車場に駐車できず、外部に貸し出すにしても、借主の層の幅を狭めます。
その結果、使われなくなった小規模の機械式駐車場は、借主が見つからず、メンテナンスもされず、「立ち入り禁止」の貼り紙とロープが張られ、放置の一途を辿っていきます。
平面化して車重・車体の大きい車を駐車できるようにする
※車両総重量が 3トンを超える車両をご検討の方につきましては、「機械式駐車場の種類や仕様、立地等」の情報を含め、直接お問い合わせください。お客様のご要望を叶えられるようにご提案いたします。
平面化の地下をガレージとして利用できるようにする
※但し、コンクリートのピットの構造や強度によっては柱を設置する場合がございます。その場合でも、柱を避けて地下スペースを利用する事は可能です。
ガレージとして利用できるための工夫(ハード面)
ノムラのマルチステージによる鋼製平面化によって、上は平置き駐車場として利用でき、地下スペースはガレージ、物置として利用が可能です。その際、より便利に地下スペースをご利用できるようにマルチステージでは幾つかオプションをご用意しております。
スライドハッチ
安全対策面においても、スライドハッチには施錠ロックを取り付けますので防犯面においても対策が施され、安心してご利用いただけます。
階段・手すりの設置
通常のマルチステージではスライドハッチと階段ではなく、点検口とタラップ(梯子)を設置しております。しかし点検口とタラップでは、地上と地下の行き来は「誰でも簡単」とはいかず、荷物の出し入れになると、荷物のサイズも大幅に制限され、出し入れは重労働な作業になります。
地下スペースをガレージとしてご利用するのであれば、スライドハッチの設置と階段・手すりの設置は、必須条件になります。
ダビット・手動式のクレーンの設置
ダビットを設置することにより、簡単且つ安全に重い荷物の出し入れができるようになります。ダビットの最大吊り上げ重量は 100kgです。
地下利用に当たっての注意点
機械式駐車場の地下スペースの利用に当たっては、法律面と技術面でそれぞれ注意しなければならない点が複数存在します。法律面においては消防法と建築基準法、技術面についてはガレージ仕様に向いている機械式駐車場、向いていない機械式駐車場がそれぞれ存在します。これらの注意点について詳しく見ていきましょう。
法律面
(但し、スライドハッチや階段等の設置は法律や条例に関わらず設置は可能です)
地下スペースをガレージとしてご利用を検討されておられるなら、一度私共に直接お問い合わせ下さい。
ガレージ仕様に向いていない機械式駐車場
過去に浸水被害があった機械式駐車場
水に浸かり、腐食した機械式駐車場の柱|水が溜まったコンクリートピット(機械式駐車場撤去作業時に撮影)
屋外機械式駐車場
マルチステージの「ピット内部が直ぐに渇き、常に清潔な状態を維持できる特徴」については コラム「第5回:機械式駐車場撤去平面化後のピット内部の湿気と衛生環境」をご参照ください。
【関連記事】
コラム「第5回:機械式駐車場撤去平面化後のピット内部の湿気と衛生環境」
ガレージ仕様に向いている機械式駐車場
屋内機械式駐車場
屋内に設置されたピット式の機械式駐車場は最も地下スペース利用、すなわちガレージ仕様として最適な機械式駐車場です。屋内機械式駐車場は雨風を凌げるので、大雨による浸水被害の危険性は低いです。
但し、屋内機械式駐車場であってもピット内部に絶え間なく水が浸透したり、最悪ピットの底に水が溜まってしまうという事があります。特に地下の階層に設置されたピット式の機械式駐車場でこうした事象が見受けられます。建物の土壌に溜まった地下水や雨水が主な原因だと考えられます。屋内機械式駐車場で水が溜まってしまう経緯については詳しくは解説致しませんが、いずれにしても屋内機械式駐車場であっても、ピット内部に水が浸透或いは浸水している場合はガレージ仕様にするのは控えたほうが良いと思います。
それ以外の屋内のピット式機械式駐車場であれば、ガレージ仕様に向いていると言えます。特に、機械式駐車場の設置台数が少なければ少ないほど、ガーレージ仕様に向けての技術的、法律的な障壁が少なくなり、ガーレージ仕様の実現性は高くなります。
屋内地下機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)
屋内地下機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)
屋内地下機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)|スライドハッチ
屋内地下機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)|地下スペース
屋内地上機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)
屋内地上機械式駐車場|マルチステージ|(ガレージ仕様)
屋内地上機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)
屋内地上機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)|スライドハッチとダビットクレーン(滑車装置なし)
屋内地上機械式駐車場|マルチステージ(ガレージ仕様)|地下スペースと階段
まとめ
今回のコラムでは都心の片隅で長年放置された機械式駐車場を“都心のガレージ”として再生できることについてご紹介させて頂きました。地下スペースをガレージとして利用するには法律面、技術面でクリアしなければならない課題等もございますが、一つ一つ丁寧に課題を解決し向き合えば、ガーレージとして利用できる可能性は高まります。
ノムラは機械式駐車場平面化工事の設計(ガレージ仕様)と施工のみ
ノムラは機械式駐車場平面化の設計(ガレージ仕様)と施工までを承っております。機械式駐車場の物件を購入してガレージ仕様にして販売するなどの不動産事業に関わる業務は行っておりません。お客様自身で、物件を購入して頂き、今回ご紹介したようなガレージ仕様の平面化工事の設計・施工をやらせて頂いております。
皆さんも“大人の秘密基地『都心のガレージ』”でもう一度、遊んでみてはいかがでしょうか。
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三