コラム
機械式駐車場問題を考える

第44回:機械式駐車場の寿命の延長

はじめに

 今年に入って、弊社には「機械式駐車場の寿命を延ばす方法」についての相談が増えています。多くの相談は、「既存の機械式駐車場の寿命を延ばし、機械式駐車装置の入替工事を先延ばしにしたい」という内容です。さらに詳しく言うと、「入替工事のタイミングを遅らせ、生涯工事回数を減らしたい」とのことです。これらの要望が実現可能かどうかについてですが、可能です。そのためには、機械式駐車場をどれだけ延命できるかを判断する基準をしっかりと理解することが重要です。機械式駐車場においては、寿命の基準となるのが駐車パレットです。このコラムでは、「なぜ、機械式駐車場の寿命がパレットの寿命に帰するか?」について、他の主要部品の寿命の話を交えながら、詳しく解説致します。

 機械式駐車場の寿命=パレットの寿命

機械式駐車場の寿命がパレットの寿命に帰する理由

 機械式駐車場の寿命を延ばすには、重要な部品である「パレット」の寿命を理解することが必須です。では、なぜ機械式駐車場の寿命とパレットの寿命が密接に関連しているのでしょうか?これにはいくつかの理由があります。
 
 まず、パレットは機械式立体駐車場の中核部品で、各社が異なる種類を提供しています。パレット交換工事は大掛かりで、これが必要になると、機械式駐車場自体の維持費が大幅に上昇します。したがって、パレットの耐久性が、駐車場の全体的な寿命に大きく影響します。
屋外機械式駐車場:昇降3段式 上段パレット

機械式駐車場(屋外)|昇降3段式 上段パレット

 

モーターの寿命が機械式駐車場の寿命ではない理由

 他の部品にも注目してみましょう。
 モーターの寿命は「耐用年数」によって決まり、これは実稼働時間に基づいています。設置からの経過時間ではありません。例えば、昇降モーターの耐用年数が 100,000時間である場合、毎日 6回の使用で約 182年間は交換が不要です。これは機械式駐車場全体の寿命とは異なる点です。
 
機械式駐車場 昇降モーター

昇降モーター


 
モーターの交換周期については、「 第33回:モーター交換の周期って?機械式駐車場の修理工事にまつわる話」で詳しく解説していますので、そちらを参照してください。
 
関連記事: 「第33回:モーター交換の周期って?機械式駐車場の修理工事にまつわる話」

チェーンの寿命が機械式駐車場の寿命ではない理由

 チェーンについても、屋内であれば交換周期は経過時間ではなく、チェーンの伸びによって決まります。チェーンの伸びは「チェーン摩耗測定スケール」で測定し、規定以上に伸びた場合に交換が必要です。しかし、これも機械式駐車場の全体的な寿命とは異なります。
 
機械式駐車場チェーン伸び測定

チェーン摩耗測定スケールを使用してのチェーンの伸びを測定


TSBAKI製チェーン測定スケール
 
「TSBAKI製チェーン測定スケール」写真出典元:モノタロウ

リミットスイッチ、基盤、シーケンサーの寿命が機械式駐車場の寿命ではない理由

 リミットスイッチ、基盤、シーケンサーなどの部品も、それぞれ耐用回数に基づいて交換されます。これらの部品は使用回数に基づく寿命を持ち、機械式駐車場の寿命とは直接的な関連はありません。
これらの部品の交換周期と耐用年数については、 「第32回:その部品交換必要?機械式駐車場の修理工事にまつわる話」で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。
 
機械式駐車場 リミットスイッチ

リミットスイッチ


 
機械式駐車場 制御盤

制御盤


 
関連記事: 「 第32回:その部品交換必要?機械式駐車場の修理工事にまつわる話」

まとめ

 ここまで、機械式駐車場の主要部品に焦点を当て、その寿命について解説しました。モーターやリミットスイッチなどの部品は使用頻度と耐用回数に基づいて交換される部品であり、機械式駐車場の寿命には直接的な影響を与えません。
 
 余談ですが、これらの部品は消耗品ではありませんので、頻繁な交換は不要です。頻繁な交換は不必要な工事を増やすことになります。
 
 一方で、駐車パレットは使用頻度や耐用回数に加えて、設置場所(屋内・屋外)、環境(海岸近くなど)やパレットがペンキ塗装されているか亜鉛メッキ加工されているかによっても寿命が変わります。亜鉛メッキ加工のパレットの方がペンキ塗装より長持ちします。
 
サビた機械式駐車場パレット

サビた機械式駐車場パレット


 
機械式駐車場の寿命を延ばすためには、 各メーカーのパレットの特性に合わせた修繕工事が重要です。これらの予防的なメンテナンスによって、パレットの寿命を伸ばすことが可能です。
 
 
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三