コラム
機械式駐車場問題を考える

第24回:機械式駐車場の浸水と鋼製平面化の寿命

鋼製平面化の耐用年数は62年だが…

機械式駐車場ピットに水が溜まり易い、又は過去に駐車場ピットが何度か浸水被害にあった場合は、平面化工事で柱を設置した場合、柱や鋼材床板のメッキの耐用年数が62年から数十年に減る可能性があります。

みなさん、こんにちは。 私がマンション管理組合、またはビルのオーナー様のところへ説明会に出席する際、よく尋ねられるのが「マルチステージは柱がなくて大丈夫なのか?」という質問を良く受けます。確かに弊社の平面化工事(鋼製床式)では、「柱がない」というのは大きな特徴の一つであります。この柱がない構造にはちゃんと理由がり、機械式駐車場撤去後の空になったピットの耐震補強対策を担っております。この空になったピットの耐震補強をする必要性について詳しくは第19回コラム第8回のコラムでご紹介しましたので是非そちらをご一読下さい。
 
今回のコラムでは、水が溜まり易いピットで柱を設置した場合の留意点と鋼製床のメッキの劣化についてご紹介したいと思います。特に過去に機械式駐車場が浸水被害に遭われた場合は、機械式駐車場撤去・平面化を検討する上で、柱の設置の有無はよく考慮する必要があるので是非、参考にしてみて下さい。
 

柱を立てたらピット底の溜まり水で柱のメッキ加工の耐用年数が62年から数十年減る

今お使いになっている機械式駐車場が、過去に浸水被害、または長い日数水が溜まっていたという事があれば、平面化工事を検討する上で、柱の設置は不向きと言えます。
単純に駐車場のピットに水が溜まれば、当然柱も水に浸かります。ほとんどの柱は鉄にメッキ加工されたものが多いですが、いくらメッキ加工され耐水に優れていると言っても、水に浸かっていれば当然錆びやすく、耐用年数も62年(※1)が数十年に減り、長期的に見ても柱の交換計画を一考する必要があります。
※1日本溶融亜鉛鍍金協会」より引用

 
浸水被害で腐食した機械式駐車場の柱

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上記の写真は、ピット内の浸水によって、長年機械式駐車場の柱が水に浸かり、腐食している様子です。既に柱のアンカーボルトは腐食で無くなっており、柱を支えられない状態になっています。
平面化工事は築後20年位が多く、地盤の状態、建築物、駐車場ピットの亀裂等の優不、水害の有無、水没の有無が貴重なデータとしてあるわけで、これらのデータに基づき平面化工事の工法を決める事が肝要です。
 
 

ピット内のメッキ部分も換気がないと湿気で耐用年数が減る。

水が溜まりやすいピット内は、湿気がこもり易く、湿気がこもるとピット内はボウフラ等の害虫が発生し易くなり、ピット内は不衛生な状態になります。常に換気ができる状態を維持する必要があります。
(ピット内の衛生環境と換気の必要性について、詳しくは第5回コラムをご参照下さい。)
また、完全にピットを密閉状態にしてしまう鋼製床は、ピット内部で湿気が常に充満し、鋼製床のメッキの劣化の原因にもなります。また、一度、錆が発生すると別の錆を誘発し、錆が広がる原因にもなります。こうなると長期的に見て鋼製床板の交換も視野に入れなくてはなりません。
 
水が溜まり易いピットで柱を設置した場合、水に浸かった柱はメッキ加工が施されていても、錆の原因になり、換気が施されていないピットでは鋼製床の錆の原因になり、平面化後の耐用年数を減らす原因になります。これから、機械式駐車場の撤去・平面化工事を検討する際、「過去に浸水被害があったか」、「ピット底に水が溜まり易いか」を確認する事をお勧めします。
 

<柱有り>

柱がある鋼製平面化は浸水被害の際に柱が腐食する

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柱を設置している鋼製床は、浸水被害が発生し、ピット内に水が溜まったら、柱が水に浸かり、腐食被害が発生する
 
<柱なし>…マルチステージ
柱がない鋼製平面化では柱の腐食被害は発生しない


浸水被害が発生し、ピット内に水が溜まっても、マルチステージは柱がない構造なので、柱の腐食は発生しない
※コンクリートピットの構造上の関係により柱を設置する場合がございます。
 
ちなみにノムラのマルチステージは、柱がない構造となっているので、浸水・ピット底に溜まった水による柱の腐食被害は発生しません。また、ピット内の換気対策も施されている構造になっております。(詳しくは第5回コラムをご参照下さい)
 
他社製品の多くが柱を設けているのは、柱を建てないと梁の強度が不足するからと思います。ノムラのマルチステージは梁と鋼材床板が縦横に網目状に組み合わさった合成断面構造になっているため、柱を必要としません。
(合成断面構造について詳しくは第15回コラムをご参照ください)
 

<マルチステージ>
ピット内部が早く乾く鋼製平面化「マルチステージ」

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マルチステージは自然採光・自然換気ができ、雨の翌日でも、ピット内部が早く乾き、衛生状態を保持し、ピット内の湿気による鋼製床の錆を防ぎます。
 
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三