第19回:機械式駐車場撤去と平面化の目的 剛性と強度
機械式駐車場撤去後のピットは脆弱
ピット全体の剛性と強度を上げる対策が必要
皆さん、こんにちは。
お客様からよく尋ねられる質問の中で、他社との鋼製床式による平面化を比較した際、「柱がない構造」について多く寄せられます。(「柱がない構造」については、 第8回:柱がない平面化 マルチステージの特徴、 第15回:鋼材床の敷き方で耐震強度は左右するのコラムでもご紹介させていただきました。)また、お客様のマンションや商業ビルの立地の地盤と機械式駐車場が設置されてある、コンクリートピットの構造などの説明を十分に受けないまま、安価な工法(埋め戻し)で工事を行ってしまい、駐車場敷地内にヒビ割れが発生し地盤沈下してしまったというお話も聞く機会が多くあります。このような悲惨な結果を招く前に、今回のコラムでは、平面化工事を検討されるにあたっての留意点でもある、「機械式駐車場を撤去した後のカラになったピットはどういう状況になっているのか?」、そして「どのような対策を施すべきか?」についてご紹介させて頂きます。
機械式駐車場を撤去した後の、コンクリートピットの状況は簡単に例えると、「注ぎ口を全開にしたカラの牛乳パック」のようになっております。
牛乳パックは購入当初、注ぎ口が塞がれている状態では、軽くてとても頑丈な容器になっています。しかし、牛乳パックの注ぎ口(上部)を全開にしてしまったら、簡単にねじれてしまったり、歪みが発生し 剛性がなくなり、少しでも外から圧をかけると簡単に潰れてしまいうような 強度、 脆弱な状態になってしまいます。注ぎ口を全開にした牛乳パックの剛性と強度を上げるには、牛乳パックと一体になった頑丈な蓋を取り付ける必要があります。
注ぎ口が全開の空の牛乳パック
ピット(牛乳パック)の中に機械式駐車場が設置されている時は剛性も強度もある程度保たれている
注ぎ口が全開の空の牛乳パックは剛性と強度を失い脆弱になる
ピット(牛乳パック)と蓋を一体化させ、剛性と強度を上げ頑丈にする
この牛乳パックの現象と同じことが、機械式駐車場を撤去した後のコンクリートピットでも言えます。
機械式駐車場がピット内に設置されている際は、ピット(構造体)と機械式駐車場(構造体)が一体化し、強度が保たれておりましたが、中身が無くなってしまったコンクリートピットは強度が弱くなります。
下の模型の写真がピットに構造体が入っている状態とそうでない状態を表してます。
※オレンジ色のBB弾は地中の土を表してます。
ピットの強度が弱くなるということは、外部からの圧潰、歪み、ねじれに弱い状態になっております。そのため、ピット上部開講部分にコンクリートピットと一体化させる頑丈な蓋「鋼製床」で剛性と強度を上げる必要があります。
機械式駐車場を撤去・平面化する上で最も注意しなければいけない点が、脆弱になったコンクリートピットの強度を上げ、耐震対策を施す事なのです。そして、そのコンクリートピットの上部開口部を塞ぎ、強度を上げる対策で最も適しているのが頑丈な蓋を取り付ける事なのです。
頑丈な蓋を取り付けるにあたっては注意しなければならい点が二つあります。一つは、蓋とコンクリートピットが一体化させること。そして、蓋(鋼製床)の構造が 合成構造である事です。「合成断面」について詳しくは、 第15回:鋼製床式による平面化工事の耐震性 Part2をご参照下さい。
頑丈な蓋が取り付けられ、コンクリートピットと一体化させることによりピットの強度が上がり、耐震対策も施すことにもなります。また、ピットと蓋を一体化させる構造が結果的に 柱がない構造を生み出すのです。
「柱がない」鋼製床の特性について詳しくは、 第8回コラムをご参照ください。
また、屋内(屋内地下も含め)に機械式駐車場が設置され、駐車場敷地内の路面にヒビ割れが発生している場合は、平面化工事を実施する際に建物全体の耐震対策を考慮し平面化が必要になります。
詳しくは、 第39回:屋内機械式駐車場のヒビ割れと平面化をご参照下さい。
ピットと蓋を一体化させ、ピットの強度を上げる
もう少し、蓋がされていない時の空(カラ)のコンクリートピットについて 埋戻しの危険性についても触れお話しましょう。
「埋め戻し」の工法は、コンクリートピットが耐えられる荷重を大きく上回る土や土砂を入れるため、コンクリートピットに大きな負荷がかかり、破損する恐れがあります。更に軟弱地盤(後背湿地等)で「埋戻し」を行ったら、ピットの破損だけでなく、地盤沈下を引き起こす原因にもなります。(「埋戻しの危険性」について詳しくは 第1回コラムをご参照下さい。)
もし、「埋め戻し」を選択するのであれば、コンクリートピットも撤去するのが、本来の取るべき工法なのですが、残念ながら「埋め戻しの危険性」については施工業者や管理会社から充分に説明されないまま、安価な価格だけを提示するだけで、正しく伝えられていないのが現状です。
機械式駐車場を新築で計画する場合、機械式立体駐車場メーカーが設計荷重を設計事務所等に提出します。それに基づきコンクリートピットが設計されます。埋戻しをすると、その 設計荷重の10倍の荷重となります。工事前に業者、及び管理会社が管理組合やお客様に説明すべき事項ではないでしょうか。
今回のコラムでは、「機械式駐車場撤去後のコンクリートピットはとても脆弱である」ことを中心にご紹介させて頂きました。機械式駐車場撤去・平面化工事は、選択を間違えると取り返しのつかない結果をもたらします。冒頭でも紹介しましたが、撤去・平面化工事の説明や知識もないまま、一方的に施工業者や管理会社に安価な工法(埋め戻し)を勧められ、選択してしまって、地盤沈下を起こし、頻繁にヒビ割れた駐車場の舗装工事を続けていると悲痛な声をよく聞くようになりました。
私どものコラムが少しでも、これから機械式駐車場の撤去・平面化工事を検討されている方々のお役になれるように、情報発信を続けて参りたいと思います。
一級建築士・機械駐車場開発者 野村恭三
お客様からよく尋ねられる質問の中で、他社との鋼製床式による平面化を比較した際、「柱がない構造」について多く寄せられます。(「柱がない構造」については、 第8回:柱がない平面化 マルチステージの特徴、 第15回:鋼材床の敷き方で耐震強度は左右するのコラムでもご紹介させていただきました。)また、お客様のマンションや商業ビルの立地の地盤と機械式駐車場が設置されてある、コンクリートピットの構造などの説明を十分に受けないまま、安価な工法(埋め戻し)で工事を行ってしまい、駐車場敷地内にヒビ割れが発生し地盤沈下してしまったというお話も聞く機会が多くあります。このような悲惨な結果を招く前に、今回のコラムでは、平面化工事を検討されるにあたっての留意点でもある、「機械式駐車場を撤去した後のカラになったピットはどういう状況になっているのか?」、そして「どのような対策を施すべきか?」についてご紹介させて頂きます。
機械式駐車場を撤去した後の、コンクリートピットの状況は簡単に例えると、「注ぎ口を全開にしたカラの牛乳パック」のようになっております。
牛乳パックは購入当初、注ぎ口が塞がれている状態では、軽くてとても頑丈な容器になっています。しかし、牛乳パックの注ぎ口(上部)を全開にしてしまったら、簡単にねじれてしまったり、歪みが発生し 剛性がなくなり、少しでも外から圧をかけると簡単に潰れてしまいうような 強度、 脆弱な状態になってしまいます。注ぎ口を全開にした牛乳パックの剛性と強度を上げるには、牛乳パックと一体になった頑丈な蓋を取り付ける必要があります。
注ぎ口が全開の空の牛乳パック
ピット(牛乳パック)の中に機械式駐車場が設置されている時は剛性も強度もある程度保たれている
注ぎ口が全開の空の牛乳パックは剛性と強度を失い脆弱になる
ピット(牛乳パック)と蓋を一体化させ、剛性と強度を上げ頑丈にする
この牛乳パックの現象と同じことが、機械式駐車場を撤去した後のコンクリートピットでも言えます。
機械式駐車場がピット内に設置されている際は、ピット(構造体)と機械式駐車場(構造体)が一体化し、強度が保たれておりましたが、中身が無くなってしまったコンクリートピットは強度が弱くなります。
下の模型の写真がピットに構造体が入っている状態とそうでない状態を表してます。
※オレンジ色のBB弾は地中の土を表してます。
ピットの強度が弱くなるということは、外部からの圧潰、歪み、ねじれに弱い状態になっております。そのため、ピット上部開講部分にコンクリートピットと一体化させる頑丈な蓋「鋼製床」で剛性と強度を上げる必要があります。
機械式駐車場を撤去・平面化する上で最も注意しなければいけない点が、脆弱になったコンクリートピットの強度を上げ、耐震対策を施す事なのです。そして、そのコンクリートピットの上部開口部を塞ぎ、強度を上げる対策で最も適しているのが頑丈な蓋を取り付ける事なのです。
頑丈な蓋を取り付けるにあたっては注意しなければならい点が二つあります。一つは、蓋とコンクリートピットが一体化させること。そして、蓋(鋼製床)の構造が 合成構造である事です。「合成断面」について詳しくは、 第15回:鋼製床式による平面化工事の耐震性 Part2をご参照下さい。
頑丈な蓋が取り付けられ、コンクリートピットと一体化させることによりピットの強度が上がり、耐震対策も施すことにもなります。また、ピットと蓋を一体化させる構造が結果的に 柱がない構造を生み出すのです。
「柱がない」鋼製床の特性について詳しくは、 第8回コラムをご参照ください。
また、屋内(屋内地下も含め)に機械式駐車場が設置され、駐車場敷地内の路面にヒビ割れが発生している場合は、平面化工事を実施する際に建物全体の耐震対策を考慮し平面化が必要になります。
詳しくは、 第39回:屋内機械式駐車場のヒビ割れと平面化をご参照下さい。
ピットと蓋を一体化させ、ピットの強度を上げる
もう少し、蓋がされていない時の空(カラ)のコンクリートピットについて 埋戻しの危険性についても触れお話しましょう。
「埋め戻し」の工法は、コンクリートピットが耐えられる荷重を大きく上回る土や土砂を入れるため、コンクリートピットに大きな負荷がかかり、破損する恐れがあります。更に軟弱地盤(後背湿地等)で「埋戻し」を行ったら、ピットの破損だけでなく、地盤沈下を引き起こす原因にもなります。(「埋戻しの危険性」について詳しくは 第1回コラムをご参照下さい。)
もし、「埋め戻し」を選択するのであれば、コンクリートピットも撤去するのが、本来の取るべき工法なのですが、残念ながら「埋め戻しの危険性」については施工業者や管理会社から充分に説明されないまま、安価な価格だけを提示するだけで、正しく伝えられていないのが現状です。
機械式駐車場を新築で計画する場合、機械式立体駐車場メーカーが設計荷重を設計事務所等に提出します。それに基づきコンクリートピットが設計されます。埋戻しをすると、その 設計荷重の10倍の荷重となります。工事前に業者、及び管理会社が管理組合やお客様に説明すべき事項ではないでしょうか。
今回のコラムでは、「機械式駐車場撤去後のコンクリートピットはとても脆弱である」ことを中心にご紹介させて頂きました。機械式駐車場撤去・平面化工事は、選択を間違えると取り返しのつかない結果をもたらします。冒頭でも紹介しましたが、撤去・平面化工事の説明や知識もないまま、一方的に施工業者や管理会社に安価な工法(埋め戻し)を勧められ、選択してしまって、地盤沈下を起こし、頻繁にヒビ割れた駐車場の舗装工事を続けていると悲痛な声をよく聞くようになりました。
私どものコラムが少しでも、これから機械式駐車場の撤去・平面化工事を検討されている方々のお役になれるように、情報発信を続けて参りたいと思います。
一級建築士・機械駐車場開発者 野村恭三