第15回:鋼製床式による平面化工事の耐震性 Part2
耐震性に優れている「合成断面構造」
皆さん、こんにちは。
以前、第8回コラムで機械式駐車場撤去・平面化工事における「鋼材床と鉄骨柱」、そして「固有周期」の関係性についてご紹介させて頂きました。今回のコラムでは、鋼材床の断面構造が与える耐震性についてお話したいと思います。
冒頭、断面構造という言葉を使いましたが、断面構造とは、鋼材床の設置の仕方を意味します。もう少し詳しく言うと、鋼材床の敷き方、鋼材床を敷く方向の事を指します。そして、この断面構造によって耐震強度は左右されるのです。
ここで、耐震性に優れた断面構造についてご説明致します。耐震性に優れた断面構造とは、梁と鋼床材が縦横に網目状に組み合わさった「合成断面構造」です。この「合成断面構造」とは簡単に言うと織物を想像して頂けるとわかりやすいと思います。織物は縦糸と横糸が交互に重なりあって一つの面が出来上がります。この原理と同じで縦糸が「梁」、横糸が「鋼材床」といったイメージです。この縦糸の梁の上に横糸である鋼材床が敷き詰められて、強く頑丈な合成断面を作り上げるのです。
<合成断面構造で組み立てられている様子>
網状に組み合わされた合成断面構造は、地震時の揺れによる、圧潰、歪みやねじれに強く、耐震性に優れているのです。ちなみに、ノムラ の鋼材床「マルチステージ」の場合、梁と鋼床材が、ハサミ金具で固定され、ボルトの緩みが発生せず、且つ床材間の硬質ゴムで床材のひずみを吸収(制震)し、床材全体を密着させ一体化することにより、床全体の平面強度を増し常に頑丈な状態を維持しております。
<合成断面構造の頑丈な「蓋」でピット全体の強度を補強=耐震対策>
ちなみに、一般的な鋼材床の場合、梁の上に床材が乗っている状態で、梁だけで支えており梁に負担がかかります。梁だけで床材・車の荷重を負担・支えることになり、地震にも弱い構造となります。
今回は、床板と梁の設置向きや組み合わせによって耐震強化対策を左右する事についてご紹介させていただきました。鋼製床式による平面化工事でも、様々な工法が採り入れられておりそれぞれ特性があります。費用面だけで採用してしまい、後日「使い勝手が悪い」、「定期的にメンテナンスが必要」、最悪な場合は「構造計算がされてない粗悪な製品だった」と言う声も聞かれます。目先の機械式駐車場撤去・平面化ばかりに目を向け、工事(もしくは製品)の特性を理解しないまま費用面だけで採用してしまうと、後日思わぬ代償を支払わなければならい事態に遭遇する事もありますので、 平面化した後の視点を持って採用することが重要と考えております。