コラム
機械式駐車場問題を考える

第14回:機械式駐車場の撤去・平面化工事(鋼製床式)の他社との比較と工事後のリスク

鋼製平面化後のメンテナンス・修繕工事・維持管理について考える

皆さん、こんにちは。
前回(第13回コラム)では、「鋼材床式による平面化工事は後日メンテナンスが必要性」についてお話しました。今回はノムラの鋼材床「マルチステージ」と他社製の鋼材床を総合的な視点で比較し、性能の違いについてご紹介したいと思います。
 
鋼材床の性能や違いを比較する際の重要な判断基準は、鋼材床を設置する前の条件より、設置後を想定することがとても重要です。設置前の条件とは、工事費用、工法、工事の期間など、工事に掛かるコストの事を指します。設置後の想定とは、平面化後に起き得るリスクやコストの事を指します。そして、設置後の想定を判断する際、以下の三つのポイントが重要になります。一つ目が、「鋼材床設置後のメンテナンスの必要性」について、二つ目が「床板が破損し取り替え工事が必要になった際のリスク」、そして三つ目が「鋼材床設置後のピット内の衛生状態」です。

 

鋼製平面化後のメンテナンス 

メンテナンスの必要性は鋼製床を固定しているボルトが緩むか否か

一つ目の「鋼材床設置後のメンテナンスの必要性」についてですが、第13回コラム「平面化にしてもメンテナンスは必要!?」でも詳しくご紹介致しましたが、他社の鋼材床は床板に取り付けているボルトが緩むため、後日ボルトを締め直すためのメンテナンスが必要になります。一方、ノムラのマルチステージは、梁と床板を固定する際、挟み金具(板バネ)を挟んでボルトを締める構造を用い、更に制振ゴムを床板の間に挟んでいるので、取り付けボルトは緩まない構造になっており、鋼材床設置後のメンテナンスは原則不必要です。

梁に挟み金具を設置

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挟み金具を介して床材と梁を固定

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詳しくは第13回コラム「鋼材床設置後のメンテナンスの必要性」を是非ご一読下さい。
 

鋼製平面化後の改修・修繕工事

特注の鋼材か一般鋼材かで工事費用は大きく変わる

二つ目の「床板が破損し取り替え工事が必要になった際のリスクと手間」は使用されている鋼材によって左右されます。他社の鋼材床は「成形鋼材」を使用しています。この「成形鋼材」は特注品であるため、場合によっては生産中止もあり得ます。もし、取り替え工事を行わなければならない場合、資材が入手できないというリスクが発生します。また、取り付け工事の際、多くの穴あけ工事が必要となり時間的コストも当然発生します。一方ノムラのマルチステージは一般鋼材を使用しており鋼材販売店より購入可能。つまり、生産中止による資材が手に入らないというリスクは回避できます。また、取付工事の際、加工作業(穴あけ工事等)は全くないので、他社製品と比べても取付工事に掛かる時間も手間も大幅に削減できます。
 

鋼製平面化後の駐車場ピット内の湿気と衛生状態

雨の後、ピット内は乾くか否か

三つ目の「ピット内の衛生状態」についてですが、これは鋼材床設置後に大きく見落とされがちで、平面化後の駐車場利用者の日常生活にも影響する重要なファクターです。他社製品の鋼材床は設置後、ピット内が密室状態になりずっと湿気が溜まりやすい状態になり、雨天後もピット内が乾きにくく、不衛生な状態になりボウフラ等の害虫発生の原因となります。ノムラのマルチステージは、「換気」と「採光」を取り入れ、湿気を取り除く構造になっており、ピット内の換気が常にできるようになっており、ピット内は常に清潔な衛生状態を保っております。

雨天2日後のピット内部の様子1

雨天2日後のピット内部の様子


 
雨天2日後のピット内の上部の様子

雨天2日後のピット内部(上部)の様子


ピット内の衛生状態について詳しくは、 第5回コラム「地下スペースの有効活用について〜採光と換気〜」を是非ご一読下さい。
鋼製平面化のメンテナンス比較項目表

メンテナンス比較項目


 

まとめ

鋼材床式による平面化工事を採用しようとする際、設置に掛かる費用や時間よりも、「設置後どうなのか?」という事を想定・考慮することが重要です。いくら設置費用が安くても、後日メンテナンスが必要になる、床板等の交換工事ができない、更には害虫対策が必要となる。このような事態を想定しないと鋼材床設置後も継続的な出費やコストが発生します。機械式駐車場撤去・平面化工事で重要なのは、「今ある問題を直視するだけでなく、その後どのように使っていくか」という視点を持つ事が、平面化後の中期・長期的なリスクを回避する第一歩でないかと思います。
 
 
 
一級建築士・機械式駐車場開発者(代表取締役社長) 野村恭三