コラム
機械式駐車場問題を考える

第18回:床材が変形してしまう鋼製平面化工法

床材が変形するか否かは梁と床材の設置方向によって変わる!

床材のたわみ・凹みの原因

皆さん、こんにちは。
今日は鋼材床式による機械式駐車場撤去・平面化工事の留意点について、鋼材床板の設置向きが与える設置(工事)後の影響についてお話したいと思います。
 
鋼材床式による平面化工事は、機械式駐車場撤去後に、蓋をするような形で鋼材床板を敷き詰めて設置し、平面化するというイメージだと思います。しかし、この鋼材床板をただ敷き詰めて設置すれば良いという訳ではありません。この鋼材床板を設置する方向によっては、鋼材床の凹みや変形ができ、ワダチができてしまい、将来的には取替え工事が必要になる可能性もあります。
 
ここで、鋼材床板の設置方向の違いがもたらす影響についてご説明いたします。


 

鋼材床板を縦方向に設置した場合

鋼材床板上面で荷重を負担するから上面の局部が変形しやすくなります。また、車の入出庫時、同じ鋼材床板に車の移動荷重がかかり、負担が大きく変形しやすくなります。すなわち、この鋼材床板の変形がワダチの原因になるのです。

床材を縦方向に配置した鋼製平面化工法

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縦方向に配置した床材に掛かるタイヤの荷重

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変形した床材

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<縦方向:鋼材床上面で荷重負担するから上面の局部が変形しやすい>
 
 

鋼材床板を横方向に設置した場合

鋼材床板を横方向に設置した場合は、鋼材床板の型鋼全体で荷重を負担するから、強く変形しにくくなります。また、車の入出庫は移動荷重を横方向に敷き詰められた約25本の鋼材床板で分担して負担をするので変形しにくいのです。
床材を横方向に配置した鋼製平面化工法

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タイヤの荷重を分散する床材

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荷重負担が分散される床材

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<横方向:鋼材床板の型鋼全体で荷重負担をするから強く変形しにくい

鋼材床板を敷く方向によって、鋼材床板にかかる荷重が変わり、横方向の設置だと荷重を分散し、縦方向の設置だと、決まった箇所にずっと荷重がかかり、凹みや変形の原因になるのです。
 
「鋼材床板は溶融亜鉛メッキ加工が施されて耐久性に優れている。頑丈である」と紹介されております。しかし、それは鋼材床板という部品が丈夫に加工さているのであって、鋼材床全体の構造が丈夫であることを意味するものではありません。
 
ちなみにノムラの鋼材床「マルチステージ」は鋼材床板を横方向に設置する工法を採用しております。
 
いかがでしょうか。鋼材床式による平面化工事は構造がシンプルなだけあって、設置方法や固定の仕方によって、耐久性能が大きく変わり、設置後の交換工事やメンテナンスが必要となる場合もあります。鋼材床式による平面化工事をご検討の場合は是非、製品の特性を理解し、設置後のコスト(メンテナンス等)を想定して決められることが重要ではないかと思います。
 
一級建築士・機械駐車場開発者
野村恭三