第10回:機械式駐車場の部品取り換え工事費用に関するトラブル
1800万円と提示された部品取り換え工事が50万円で収まった。
皆さん、こんにちは。前回は「ノムラの機械式駐車場コンサルティング」の基本姿勢についてご紹介させて頂きました。今回のコラムではノムラが携わった案件で「1800万円と提示された部品取り替え工事が50万円で収まった」事例についてご紹介したいと思います。
これは昨年の夏頃でした。私が専属コンサルタントとして所属する(社)マンション管理組合支援センター(以下、支援センター)から北海道の札幌市内のマンションで機械式駐車場問題があると最初の連絡がありました。
依頼の内容は、北海道札幌市内の地区10年のCマンションの機械式駐車場(地上2段地下1段昇降横行式、収容台数32台)の鉄部塗装を実施したところ、あまり経験のない施工業者が実施したため、粉塵等がチェーンや駆動部、その他機械部に付着してしまいました。その後「メーカーから機械式駐車装置部品を全取り換えなければ点検をしない」との通告を受けた。その部品全取り換え工事費用は1800万円と提示されました。この高額な金額を示されて驚いたマンション管理組合の住人は、支援センターに駆け込み、私の所に相談が来ました。
当初、1800万円と言う金額に管理組合及び施工業者が振り回され、解決が遅れ、点検もスットップしていました。更に、マンションの住人はこの状況下で機械式駐車場を使い続けていたため、一刻も早く専門家チームを編成し、現地調査を行い、原因究明と解決策を見つけ出さなければならない状況でした。
実際に現地調査を行ったところ、本件の原因は「施工業者が養生をしないで施工を実施し、その後、クリーニングを実施せず、工事完了引き渡しをしてしまったことによる原因」と判明しました。この調査結果により、全面取り換えの必要はなく、独立系の点検業者に要点を説明しクリーニングを依頼、その費用は50万円程でした。その後、新たな点検業者も事前に候補を2社に絞り、現地で面談を行い決め、定期点検も実施することができるようになりました。
今回の事例の根本的な原因は、機械式駐車場の知識の乏しいマンション管理組合がメーカーのメンテナンスから安価な点検業者に依頼し更に、経験不足な塗装業者が行った為に引き起こしたのが事の始まりでした。ただ「金額を抑えたい」という理由で業者を選定するのは極めて危険です。今回の事例の教訓は、機械式駐車場の塗装は、施工前に塗装業者と点検会社と管理組合三社で簡単な打ち合わせをすることが肝要です。
一級建築士・機械式駐車場開発者(代表取締役社長)
野村恭三