第29回:機械式駐車場入替工事と平面化工事の組み合わせ(前編)
機械式駐車場の入替工事と平面化の両方を両立するには?
近年私共のところに「機械式駐車場の入替工事を実施し、一部区画の平面化を検討している」という要望が寄せられます。
この「一部区画の平面化」とは、大規模修繕計画の機械式駐車場が入替の時期(約15年目~)に差し掛かり、機械式駐車場の機械の入替を行うと同時に、一部区画は機械式駐車場を撤去し平面化したいといった内容です。
「当初の計画では、機械式駐車場の機械全機を入替予定であったが、駐車場利用者が減り、機械式駐車場の空きが増え続け、更には当初の計画通り修繕積立金が集まらない等の当初想定されていなかった問題が発生。全機械の入替工事を実施するには財政的にも厳しく、入替工事を実施したとしても機械式駐車場の利用者減少の状況は変わらない。しかし、機械を全撤去して平面化してしまったら、現在の既存の駐車場利用台数が足りなくなってしまう…」
このように「どの機械式駐車場を減らし、どの機械式駐車場を入替すべきか」という相談が私共のところへ寄せられるようになりました。
今回のコラムでは、一部区画を平面化し、機械式駐車場入替工事を実施する場合、
「どの機械の入替工事を実施し、どの機械式駐車場を平面化した方が良いか」、技術的観点からご紹介致します。
どの機械の入替工事を実施し、どの機械式駐車場を平面化した方が良いか?
機械式駐車場の入替工事と平面化工事を両立させるためのポイント
機械式駐車場の駆動部分が多いか少ないか
平面化する面積が大きいか小さいか
マンションの機械式駐車場は主にピット単純昇降式とピット多段昇降横行式の2つの機種になります。
駐車台数が多い場合、この2機種が設置されていることが多くあります。
今回はこの想定に基づき概略をご紹介したいと思います。
<例:写真>
左:昇降横行式(地上3段・地下1段)
右:昇降三段式(地上1段・地下2段)
入替・一部平面化の計画案
プランA
「ピット多段昇降横行式の入替を実施して、ピット単純昇降式を撤去・平面化を行う」
プランAのメリットは機械の機種を集中することにより管理しやすくなり、残りを平面化する。デメリットは、ピット多段昇降横行式はピット単純昇降式より機械単価が高い。理由は昇降装置と横行装置の二つの装置で構成され、それに伴い駆動装置がピット単純昇降式より多くなるからです。(詳しくはプランBでご説明致します)
プランB
「ピット多段昇降横行式をピット単純昇降式に入替。ピット単純昇降式は入替、残りを撤去・平面化する」
プランBのメリットは工事全額が安くなることです。ピット単純昇降式はピット多段昇降横行式より機械単価が安いからです。ピット単純昇降式は3台分に1つ昇降装置があります。ピット多段昇降横行式は3台分で約3.5箇所の昇降横行駆動装置があるので、駆動装置が少ない分、安くなります。
プランAとプランBではどちらがコストパフォーマンスは良いか?
残りを平面化するにしても、プランBはプランAに比べ集約していないので平面化分が少なく平面化費用も安くなります。また、メンテナンスコスト面でも、ピット単純昇降式はピット多段昇降横行式より駆動部分が少ないので安く交渉できます。
次回、第30回コラムでは、機械式駐車場入替工事と平面化工事の組み合わせ(後編)「あるタワーマンション理事の機械式駐車場入替工事の奮闘記」と題して、管理会社・駐車場メーカーの都合で提出される見積(提案)にどう、タワーマンションの理事は切り返し、交渉を有利に持って行く事ができたのか。そのノウハウについて事例を元に紹介致します。
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村 恭三