第26回:マンションの機械式駐車場の管理のあり方
他人に任せきりではいけない!自分達で管理する
任せきりは自分の財産を他者に奪われる第一歩
皆さんこんにちは。
今回のコラムは「マンションの管理のあり方」について、私共に寄せられた、機械式駐車場の事例を元に解説していきたいと思います。尚本コラムでは「マンションの管理」という言い方をさせて頂きますが、マンションの機械式駐車場問題について、お話させて頂きます。
他者に任せるということは自分の財産を失う
マンションを所有し住む上で、マンションを管理・維持するという事は、自分達の住環境を整備するだけでなく、マンションの資産価値を維持する事にも繋がります。そして、マンションを管理する上で管理会社は欠かせない要素になります。マンション管理会社は、マンションの管理業務や修繕積立金などの管理を委託され、マンションの維持・管理に必要な修繕工事やメンテナンス等などの管理業務を管理組合に代わって、管理業務を請け負ってくれています。マンションの管理には専門的な分野の知識や技術も多く存在し、各専門業者の助けが必要とされています。機械式駐車場の維持管理も、専門的な知識や技術を必要とする分野の一つです。専門的知識や技術は一般の方々(管理組合も含め)にはなかなか「理解できない」、「分からない」部分ではあると思います。しかし「理解できない」からといって、第三者に管理を丸投げする事は、第三者につけ込まれる隙を与える事になり、第三者都合で自分達のマンションの財産を好き勝手に管理される恐れがあります。
専門性が不透明であってはならない
専門性の知識が分からないという事は、知識を持っている者と持っていない者との間に情報格差が生まれます。この情報の非対称性が情報を保有する者のみが有利に物事を進められるのです。いくら「情報を保有していない者」が「情報を保有している者」に情報の開示を求めても、「情報を保有している者」は自分達に有利な情報しか開示せず、「情報を保有している者」にはかないません。
業者の選定は自分達で行う
この情報の非対称性を解消するには、情報を保有しない者も理論武装する必要があります。つまり、情報を保有する者に対する自ら対抗馬を見つけて立てる事です。
この対抗馬を立てる事によって、今まで分からなかった専門的知識や技術が見えていき、情報を保有する第三者に対して対抗していく事が可能です。
マンション管理(機械式駐車場)においても「情報の非対称性」は存在します。一般の方が分からない事をいいことに、管理会社を通して内容の分からない部品交換工事や、金額構成が不透明、工事の必要性を疑問視するような提案をされた事はありませんでしたか?
どんなに相手から推し進められ、決断を迫まれても、分からない時はしっかり立ち止まり、内容を精査する時間と準備を設ける事が大切です。
業者を選定する基準
機械式駐車場の場業者の選定
先程、情報の非対称性に対抗するには、情報を保有する相手に対して、「自ら対抗馬を見つけて立てる事」とお話しました。では、その対抗馬はどのような基準で選定すれば良いのでしょうか。ここからは私共に寄せられた機械式駐車場の事例を元にお話します。
ポイント①…技術的根拠に基づいて説明がなされているか。
技術的根拠に基づく説明ができるか否かは、対抗馬を選定する上で最も重要なポイントです。
例えばチェーン交換で「経年劣化で交換」というのは技術的根拠に基づいていません。特に屋内であれば普通のメンテナンスをやっていれば錆もありません。すると「チェーンの伸び規定」が技術的根拠になります。「経年劣化」という言葉は何も技術的な根拠を示していません。きちんと技術的な根拠を示して説明が出来るかが、ポイントとなります。
私共はよく、マンション管理組合の理事長、修繕委員(機械式駐車場担当委員も含む)の方々から直接お問いわせを頂きます。
某神奈川県のマンションの事例についてご紹介致します。依頼内容は平面化工事についてでしたが、「管理会社から提案された内容が分からない。何に基づいて工事の必要性や価格構成が成り立っているのか分からない」という声を聞きました。実際私達が現地調査を行なってヒアリングと書類等を拝見したら、定期交換という名のもとに、不必要な部品交換が実施されておりました。更に交換工事は私たちがその場で暫定的に見積もった金額の約数倍の金額が管理組合側に提示されていたのです。そして、管理組合側には技術的な根拠や説明がなされないまま、ただ一方的に示されたのです。
このようなケースは今年に入ってからも多く私共のところに相談が寄せられます。そして共通しているのは「管理組合側も機械式駐車場の専門知識がない。だから提示された案に対抗できない」という点です。もし、「提示された工事の内容が不明、価格構成が不透明」と思ったら、別の第三者に相談し、妥当な解決策を見つける事が重要であると考えます。
ポイント②…気づいた人が動く
ここで、マンション管理組合と管理会社の関係をもう一度整理して見ましょう。管理会社は各マンションにフロントマン(管理組合と管理会社を繋ぐ窓口)を配置しているかと思います。フロントマンの役割は管理組合から「何かマンションで困っている事はないか、問題はないか」等、マンション管理に必要な業務を幅広くサポートするのが、彼らの仕事です。しかし、フロントマンの主人(あるじ)は、管理会社であって彼らも会社の為に働かなくてはなりません。だから、「自分のマンションの機械式駐車場の運営・修繕計画を見直したい、機械式駐車場を撤去・平面化したい」と直接フロントマンに頼み込んでも、管理組合側にとって良い答えが返ってくるとは限りません。
又、理事長や他の管理組合の役員に任せきりでも、問題解決の糸口が見つかるとは限りません。大事な事は、まず気づいた人が情報を集め、直接専門家と接触し意見を貰うところからが、始まりだと思います。
厳しい口調にはなりますが、やはり誰かに任せるのではなく、「気づいた人が自分で動く」事がマンション(機械式駐車場)コンサルティングをしていて、重要ではないかと思います。「誰かがやってくれる」、そのようなフリーライドの姿勢だと、管理会社の都合で物事が進み、「気がついたら修繕積立金が全くない」という相談もありました。
まずは、「何を優先的に解決しなければならないのか」を順位づけ、そしてその問題解決のためにいくら支払えるのか。自分達のマンションの課題と現実にしっかり目を向ける事が大事ではないかと思います。
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三