コラム
機械式駐車場問題を考える

第22回:機械式駐車場平面化工事の「安全」と「安心」の違い

機械式駐車場の「安心」は「安全」の上に成り立つ

私が某マンションの管理組合理事会で鋼製平面化の説明をした時でした。理事のお一人が弊社のマルチステージについて「『柱がなくていい』ことを理事が総会で説明出来るよう、論ぜよ」と言われました。私は技術的根拠の観点から、この質問に答えました。しかし、どんなに技術的根拠の観点から説明しても残念ながら、納得を得られませんでした。 我々技術者の使命は「安全」を成立させる事です。それは構造計算、実績、実験等の技術的根拠・証拠から確立するものであります。
 
当社のマルチステージは、床材と梁との一体化の合成構造です。合成構造とは、複数の材料を組み合わせて一つの構造部材としたものです。(詳しくは、第15回コラムをご参照ください)
だから、「床が丈夫」で「経済的に長い梁」を可能にしました。つまり柱を建てる必要がないという事です。(注:ピットの形状がこの構造に適さない場合は、柱を建てることがあります)
他社の場合、通常では長い梁で床材を支える事ができないので、柱を建てていると思います。
 

安全を基礎として受け入れることなく論じる安心はない

 

この時、私に質問を投げかけた理事の方は、私共技術者が示す「安全」ではなく、「安心」つまり「不安」を話されていたのです。
「不安」とは精神的なものであり、根拠から逸脱している内容であっても一度植え付けられると払拭が難しくなります。どんなに技術的根拠を示し、安全性を証明しても、安心には繋がらず「不安」の方が優ってしまいます。
 
機械式駐車場関連等の仕事を受注する際、管理会社・業者・コンサルティング会社が管理組合に迎合し技術的根拠の無い「安心感」を与たり、いたずらに不安を煽り、「安全」を「安心」にすり替える管理会社・業者・コンサルティング会社も存在します。
 
また、軟弱地盤が問題になることもあります。この場合、埋戻し工事は論外です。
私共は「安全」の確認のためデータを集め、且つ現状を外観調査して判断しています。
「安心」は、その上でお客様が決める事です。
 
「安心」出来る事は大切なことだと思います。
繰り返しになりますが、「安全を基礎として受け入れることなく論じる安心はない」。
 
私は、そう思います。
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
代表取締役社長 野村恭三