COLUM

機械式駐車場問題を考える

第34回:何か変?機械式駐車場メンテナンス費用のカラクリ

メーカーメンテナンスvs.独立系メンテナンス専門業者
建設会社>機械式駐車場メーカーの関係性
管理会社 × 独立系メンテナンス業者の関係性

皆さんこんにちは。  
機械式駐車場問題「修理工事編」、「メンテナンス編」、「交換工事編」でお届けしているシリーズ第二弾。今回は「メンテナンス編」についてご紹介致します。
(第一弾の「修理工事編」につきましては、第32回第33回を是非ご一読ください)
 
機械式駐車場メンテナンス費用のカラクリとは、
 
本題のカラクリお話に入る前に、まず機械式駐車場のメンテナンス会社について説明致します。まず、機械式駐車場メンテナンス会社(保守点検業者)は大きく分けて、機械式駐車場メーカーが直接メンテナンスを請負うメーカーメンテナンス。そして、今回のコラムのポイントである、機械式駐車場のメンテナンスのみを専門とする独立系メンテナンス会社があります。独立系メンテナンス業者には各地域に拠点を設けて、特定のエリアを巡回し、保守点検業務を行っている会社もあります。独立系のほとんどが請負の形態を取っており、機械式駐車場メーカーから請負う場合もあれば、管理会社や管理組合、商業施設オーナーから直接請負う場合もあります。
 
機械式駐車場を納品した当初の機械式駐車場のメンテナンス(保守点業務)は、機械式駐車場を納めたメーカーが請負うのが基本となっております。
 
メーカーメンテナンスの特性…「メーカーは産みの親」
メーカーメンテナンスの特性は、「常に納品した時の状態を維持する」事に重点を置いています。メーカーは、その名の通り製品を製造した責任があります。自社製品に対して技術と責任を持って自社の製品を納めているので、製品の品質、性能に問題がない状態で納品しております。メーカーは自社製品の設計図があり、設計図に基づき計画的に品質保持が可能です。これが「常に納品した時の状態を維持する」という意味です。
さて、「常に納品した時の状態を維持する」という事は、当然費用面のコストは割高になります。維持責任にかかる経費がありメンテ費用は高くなる点がボトルネックとなり多くのお客様が、メーカーメンテナンスを辞め独立系のメンテナンス業者に移行する動機に繋がっていると思います。
 
独立系メンテナンス会社の特性…「養親」
独立系メンテナンス会社の特性は、「機械式駐車場を動かせる状態を維持する」ことに重点を置いております。メーカーと独立系メンテナンス会社の違いを表すとメーカーが「産みの親」、独立系メンテナンス会社が「養親」のイメージを持って頂けるとこの後の解説が分かりやすくなると思います。
独立系メンテナンス業者の能力(技術力)と費用はメーカーメンテナンスと比べ安価ですが、技術者の能力もメーカーには劣ります。また、独立系メンテナンス会社には設計図がないので計画的な品質維持が難しいです。また、独立系メンテナンス業者にはいい加減な業者も存在し、「機械がただ動けば良い」と場当たり的に業務を行い、安かろう悪かろうの専門技術を有しない業者も存在します。さらに目視点検だけ行い、給油・調整作業を怠る悪質な業者も存在します。
(機械式駐車場メンテナンスの重大3要素については第11回コラムをご参照ください)
 
独立系メンテナンス業者の費用は業者の能力問わずメーカーメンテナンスと比べ安価となっています。機械式駐車場の維持・管理だけに焦点を当てるのであれば、機械式駐車場のメンテナンスは独立系メンテナンス業者が請負っても構わないと思います。しかし、先に述べた通り、メーカーは「産みの親」であり、独立系の業者は「養親」であって性質が異なります。そして、独立系の業者の技術力はメーカー程高くありませんので、「メンテナンス後不具合が生じる」等、機械式駐車場の維持管理が危うい状態にさせられる時もあります。時にはメンテナンスを途中で辞退する業者もあります。この2点を押させて、本コラムの本題へ移りたいと思います。
 
「何か変?」メーカーのメンテナンス費用はなぜ高い
冒頭、「機械式駐車場メンテナンスの特性」でメンテナンス費用が割高なのは、「常に納品した状態を維持する」という観点からメンテナンス費用が高額と説明しました。
しかし、メーカーのメンテナンス費用が割高な理由は他にもあります。それは、マンション建設会社と機械式駐車場メーカーの不公平な関係性にあります。
 
マンション建設時に、建設会社は機械式駐車場メーカーに安く納品させようとする「慣例」があります。建設会社に対し交渉面で優位性のない機械式駐車場メーカーは建設会社の「要望」を素直に受け、納品時に安く製品を納めます。しかし、機械式駐車場メーカーも策を講じ、後日の「入替工事」や「メンテナンス費」や「修理費」に経費を上載せし、後日回収するというビジネスモデルを構築しているのです。
(機械式駐車場の入替工事が高額な理由について詳しくは第28回コラムをご参照ください)
 
建設会社は機械式駐車場メーカーに安く納品させているので住民が施工建設会社に機械式駐車場のコストの件で相談してもメーカーが損をすることはしないのです。
「何か変?」長期修繕計画に機械の交換工事がない
マンションの機械式駐車場が築後20年経過しているにも関わらず、機械式駐車場の長期修繕計画の中に「機械の交換工事」の記載がないという事を私共に相談が寄せられた事が幾度かありました。そのかわり、交換年数が40年という半永久的な年数が記載されてありました。さて、これはどういう事でしょう。
 
こちらの相談が寄せられたマンションでは独立系のメンテナンス業者が機械式駐車場の保守点検業務を請負っていました。先にもお話した通り、独立系メンテナンス会社は機械式駐車場の「養親」であって「産みの親ではありません」。独立系メンテナンス会社は当然自社製品(機械式駐車場)を持っているはずがありません。そこで、考えたのが「交換工事を実施せず、メンテナンスを続け今ある機械式駐車場を半永久的に延命させる」という策を発案したのです。メンテナンスだけで機械式駐車場を半永久的に存続させる事は「信頼性管理方式」という技術を用いれば技術的には可能ですが、これには高い技術力と綿密な管理能力を必要とし、高度な機械式駐車場のパーツの知見と知識も兼ね揃えなければなりません。「信頼性管理方式」による長期修繕計画は機械式駐車場メーカーの技術者の中でも一部に限られたプロフェッショナルでなければ成し遂げることができない手法です。独立系のメンテナンス業者が信頼性管理方式を用いた長期修繕計画を実施するのは困難と推測されます。
 
つまり、「交換年数40年」というのは機械式駐車場メーカーが示した年数ではなく、管理会社と独立系メンテナンス会社が勝手に自己都合で作成された計画書なのです。メンテナンスが長く続けば、メンテナンスを請負う業者も儲かり続けられるというカラクリなのです。
 
何か変?メンテナンス業者を独立系に変えたのにさほど費用が減額しない
「メンテナンス業者をメーカーから独立系に変えたのに金額がさほど変わらない」このような相談も私共に良く寄せられます。
 
【中抜きのビジネスモデル】
数十年前に管理会社がメーカーのメンテナンス会社を外し、独立系メンテナンス会社を下請けとして採用。管理会社は管理組合より受注、独立系メンテナンス会社に仕事を発注し、差額を利益としたビジネスモデルが形成。
このビジネスモデルの独立系メンテナンス業者の修理費は時系列的にも技術的にも疑問がある場合が多いです。管理組合から直接受注する場合は、一部は管理会社又は担当者に還流される事があります。
 
独立系メンテナンス会社の中にもこのようなビジネスモデルに比重が少ない会社もあります。また、独立系メンテナンス業者に発注する時は、例えば制御装置(基盤)を交換する際に当該機械式駐車場メーカーの基盤交換ができるルートがあることを確認して発注するのです。基盤とは制御回路をプリント回路板に施されたもので大量生産に向いているが初期コストが掛かります。他の方法としてシーケンサー(コンピューター)にプログラムして回路を作成する方法があり機械式駐車場メーカーもこの方式を採用している会社もあります。
 
【メンテナンス業者を見分ける判断】
独立系のメンテナンス業者を見分ける判断としては社長がメーカー出身の技術者で、上記のビジネスモデルに多く関与していない会社が好ましいと思います。
 
まとめ
今回のコラムでは、「機械式駐車場のメンテナンス費用のカラクリ」と題して、機械式駐車場メーカー、独立系メンテナンス業者、更には建設会社、管理会社との関係性等、機械式駐車場業界の内部事情についてお話しさせて頂きました。今回ご紹介した内容が全てではありませんが、私共に寄せられた相談を元にカラクリの背景について解説させて頂きました。
機械式駐車場問題で考慮しなければならい点は、「お客様の利益を守る」そして、「情報の非対称性の溝を埋める」一方が知っていて、もう一方は知らないという溝を埋める事だと思います。
 
情報の非対称性がB to Bビジネスで繰り広げられるのならまだしも、B to Cの「対マンション住民(管理組合)」に対して行うのは明らかにB(すなわち業者)が一方的に利益を得るのは明らかに不平等です。
 
情報の非対称性を「強み」や「優位性」としている業界は、お客様に多大な負担をかけて自分達(業者)が儲かる事と同じです。
機械式駐車場専門コラムでは、「情報の非対称性の溝を埋める」、機械式駐車場にお困りの皆様に役立つ情報を発信して参ります。
 
機械式駐車場開発者(一級建築士)
野村恭三