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機械式駐車場問題を考える

第21回:機械式駐車場の利用を停止し、平置き駐車場として利用するリスク

落下事故を誘発するリスクを引き上げる

機械式駐車場の利用を停止し、地上パレットを平置きの駐車場として利用するのは、車の落下事故を誘発する危険性を高める。

近年、機械式駐車場の利用者減少により、維持管理費の削減を図るために、機械式駐車場の電源を落とし停止させ、地上の上段パレットだけを平置き駐車場として利用されるケースをよく私共も目にします。しかし、この方法は、機械式駐車場の運営管理、技術的観点から見て大変危険であり、駐車している車の落下事故を誘発するリスクを引き上げます。
 
今回のコラムでは、昇降二段・三段チェーン式の機械式駐車場の、機械式駐車場利用を停止し、保守点検を行わないで上段パレットだけを平置きの駐車場として利用した際のリスクと危険性について説明します。

 
バランスチェーンを用いたピット昇降二段・三段式、及び昇降横行式の場合
多くのピット昇降二段式、三段式、及びの機械式駐車場ではバランスチェーンを採用しています。機械式駐車場を停止しても常にバランスチェーンに荷重が掛かった状態にあります。
ここで注目して頂きたいのが「イラストA」の部分です。



バランスチェーンとして用いられているローラーチェーンはピンで繋がっています。


ローラーチェーン解説図
<「株式会社 江沼チヱン製作所」HPより引用 >
 
駐車機でピン直径は8mm程度です。バランスチェーン端末はピットの底盤に固定されています。この端末ピンが破断し、落下する可能性が高いのです。湿気の多い、又は水に浸かっている状態だと、細いピンは腐食して切れるのは時間の問題です。保守点検・メンテナンスをしていない(特に調整と給油を怠った)状況だと当然バランスチェーン、昇降チェーンは腐食し、固着(チェーンが回らない状態)してしまいます。腐食しているという事は細いピンの径は実質細くなっているという事です。排水ポンプの点検等で長い間停止した機械を起動するとチェーンは破断し、駐車している車の落下事故に直接繋がります。
 
機械式駐車場のメンテナンスの3要素(給油・調整・動作確認)については、第11回コラム:「機械式駐車場のメンテナンスとは」でもご紹介しました。是非ご参照下さい。


機械式駐車場を停止し、それでも上段パレットを平置きの駐車場として利用するために、最低限必要な対策とは?
 
メーカーによって、パレット又はアンカーベースに着床板が設けられてある場合と、ない場合があります。メンテナンス業者のメンテナンス技量不足で、着床板が設けられてもうまく着床していないものもあります。最低限の対応としては、角木材をパレットと底盤の間に詰め込み端末チェーン・ピンの破断落下を防ぐことです。また着床していてもバランスチェーンは常に張って負荷がかかっているのでチェーンが腐食したら破断します。
 
また、地震時にチェーン・ピンが破断した場合、パレットと歩廊がぶつかり合うので入出庫面のパレットを固定する、固定化が必要になります。
<固定化工法による平面化工事について詳しくは第7回第12回コラムをご参照下さい>
 
固定化を実施する場合は、排水ポンプのメンテナンス及び水害時の問題とピット内の衛生面の問題で、できれば上段、中段パレットは撤去し、下段パレットを入出庫面(地上)として固定することが望ましいです。
 
「機械式駐車場を停止=維持管理費の削減」と思われがちですが、定期点検が行われていない機械式駐車場は常に落下事故と隣り合わせのリスクがあるという事を認識しなければなりません。機械式駐車場を停止した状態で、地上パレットを平置きの駐車場として利用することは落下事故のリスクを高めるだけでなく、人身事故にも繋がりかねません。停止期間が長ければ長い程、危険度は高まります。下段パレットを固定するにもクレーンが必要になり工事費は高くなります。
 
もし、停止した機械式駐車場に平置きで車を駐車させるのであれば、最低限の対策として、固定化を実施し、後日完全撤去・平面化する事を機械式駐車場の専門家として推奨します。
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三