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機械式駐車場問題を考える

第35回:信頼性管理方式を用いた長期修繕計画

定期性交換方式vs.信頼性管理方式

機械式駐車場の部品交換の計画はどのようにされていますか。  
おそらく多くの方が部品の耐用年数、部品メーカー、機械式駐車場メーカー、メンテナンス業者が推奨する交換年数を基準に部品交換を実施されているかと思います。このように定められた交換周期(年数)で交換する整備管理方式を「定期性(整備)管理方式」と言います。
(部品交換の周期について詳しくは第32回第33回コラムをご参照ください)
 
定期性管理方式は時期が定められ、予算も組みやすいし、メンテナンス会社にとっても定期的な収入源になるので、顧客と業者双方にとって合理的な整備管理方法とされています。しかし、定期性管理方式の最大の弱点は、「まだ使える部品を交換してしまう」という点です。使える部品まで交換してしまう事は一言で言うと「お金の無駄遣いです」。そして、早期に部品交換をしてしまうため、部品の故障や真の問題が発覚しにくいという点です。これらの問題を解決する整備管理方式が「信頼性管理(整備)方式」です。今回のコラムでは「定期性管理方式」と「信頼性管理方式」の違いと「信頼性管理方式」の運用方法についてご紹介いたします。
 
定期交換方式 vs. 信頼性管理方式
現在、マンションの長期修繕計画に用い入れられる管理方式は主に「定期性管理方式」が行われています。
 
定期交換方式の課題
冒頭でも説明しましたが、定期性交換方式では「定期的に交換周期を迎えたら当該部品を交換する」というものです。従って「まだ使える部品までも交換してしまう」弱点があります。定期性交換方式は主に3つの問題が取り上げられます。
 

  • 稼働時間と故障との間に相関のない部品の交換となる
  • 早期に部品交換してしまうため機器の真の問題が発覚しにくい
  • 改良や改善の動機を失い、過剰品質の是正の機会も逸することになり、適切な品質の確保を失うと同時に、未だ寿命のある部品を破棄することになる

 
①稼働時間と故障との間に相関のない部品の交換になる
「稼働時間と故障との間に相関のない部品の交換になるとは、必ずしも「時間の経過≠故障の原因」ではないという意味です。例えば「年数は経過したけど、使用回数が少ないのでまだ故障はしていない」。つまり、稼働時間(年数の経過)だけでは故障の原因は測れないという事です。機械は使わないと使えなくなります。
 
②早期に部品交換してしまうため機器の真の問題が発覚しにくい
①の状態で部品を交換してしまうと、機械機器、部品の真の問題や故障の原因を発見しにくくさせます。
「何となく定期交換時期を迎えて、部品交換をして、何となく機械(駐車場)も動いているから問題ないだろう」
ところが、ある日突然動かなくなり、いつも通り部品交換しても動かなくなる。このルーティンに陥ってしまったら、原因究明ができないまま無駄な交換工事が重なり、機械式駐車場利用者であるマンション管理組合やビルオーナーの方々は、永遠に原因不明のままただ修理工事に多額の費用を支出し続けることになります。
 
③改良や改善の動機を失い、過剰品質の是正の機会も逸することになり、適切な品質の確保を失うと同時に、未だ寿命のある部品を破棄することになる
まだ使える部品を早期に交換するという事は、使える部品を無駄にするだけでなく、改良や改善の動機を失います。また、適切な品質の状態を把握する機会を失い、安定的な品質の確保が難しくなります。つまり、機械式駐車場の信頼性と安全性の両方を失う事になります。
 
信頼性管理方式
定期性交換方式の3つの課題を解決する整備管理方式が「信頼性管理方式」です。信頼性管理方式は、航空業界では1970年代から本格的に導入されました。第二次世界大戦前の航空機は「予備整備」の思想に基づき、一定時間の飛行(300時間程度)後にオーバーホールしていました。しかし、月日は経ち、部品の設計技術・信頼性が向上し、部品の寿命も伸び、定期的にオーバーホールする部品は少なくなりました。主要部品の使用率と事故率を調べても、双方の間に相関のない部品を交換していたことも判明しました。定期性交換方式では「過剰な部品交換が行われてしまう」。「早期に部品を交換する為、真の故障の問題が発覚できなくなり、原因究明の機会が損なわれる」。これらの結果、機械全体の信頼性と安全性を損なうことが定期性交換方式の課題でありました。これらの課題を解決し、信頼性と安全性を確保する新たな整備管理方法が「信頼性管理方式」です。
 
航空業界における信頼性管理方式を簡単にご紹介致します。
 

1.「効果的な整備方式を設定
2.「整備の実施」
3.「信頼性の監視とデータの採取」
4.「問題点の把握と解析」
5.「効果的な対策の実行」
6.「メーカーへのフィードバック」
『信頼性管理に基づく航空機の整備』川島靖司」より引用
 
航空業界の信頼性管理は上記6つの手順で整備管理を実施するものであります。
これらの手順を機械式駐車場に当てはめると、1から5の手順を参考にして、マンション・機械式立体駐車設備の長期修繕計画に導入してまいります
 
そこで信頼性管理方式をマンション・機械式立体駐車設備の長期修繕計画に導入することを提案します。
 
 
機械式駐車場における信頼性管理方式の実施手順について
信頼性管理方式は、ただ定期保守点検するだけではなく、

  • 状況監視し予め設定された品質水準を割る場合、原因究明と対処処置がとれるようにする。
  • 故障情報を系統的に収集整理・活用し故障原因の除去等の効果的対策がとれるようにする。

これら2点も定期保守点検作業にも含まれます。つまり、定期点検をしながら部品の使用状況の記録を取り続けて、データ化していきます。
 
実施手順
まず骨子は定期性(整備)管理方式に該当する交換部品と、信頼性管理方式に該当する交換部品に分類します。
 
定期性(整備)管理方式分は予算計上する
本管理方式には安全面で重要な部品と、劣化故障時期が重なり易い部品で構成されます。
駐車設備メーカーの主張する交換周期は製品によって差はあるが、メーカーの設定した交換周期を検討し交換周期の延長を図ります。
 
信頼性管理方式分は上限を決めて故障積立金として 一般会計から修繕積立金に移行し毎月積み立てる
本管理方式には交換周期以上に使用することを前提にした部品で構成されています。
上限を決めた故障積立金内で運用していくためには通常技術力、予測技術力、部品解析力が
必要になります。将来的には部品毎に通信機能を持たせ、自動認識や自動制御・遠隔計測などを行う(IoT)仕様が望ましいですが、現状では先に説明した航空業界における信頼性管理の手順1から5を実施していく事になります。
 
まとめ
定期性交換方式は一見、合理的な手法と思われがちですが、実はまだ使える部品を破棄してしまい、故障の原因究明の妨げになってしまいます。では、部品の交換の見極めはどうすれば良いのか。これは使用頻度を算出し、チェーンの場合でしたら専用の定規で測定する等の方法が有ります(詳しくは 第32回第33回コラムをご参照ください)。


写真:チェーン測定
 
定期的な交換は「一つの目安」と言われますが、部品交換は使用頻度を基準に考えて、計画していく事が最も効率的であると考えます。
 
 
機械式駐車場開発者(一級建築士)
野村 恭三

 
参考文献:
「信頼性管理に基づく航空機の整備」川島靖司