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機械式駐車場問題を考える

第7回:機械式駐車場撤去・平面化工事の種類と特徴

「固定化」・「埋め戻し」・「蓋をする」。工事方法の特性とは?

機械式駐車場解体・撤去・平面化工事の種類と特性についてのコラムです。代表的な工法である「埋め戻し」、「固定化」、「鋼製床(蓋)」の3つについてメリット、デメリットについて。

皆さん、こんにちは。

今回は「使われなくなった機械式立体駐車場の撤去工事の種類」についてご紹介致します。使われなくなった機械式立体駐車場の問題は、マンション管理組合にとって大きな悩みのタネの一つではないでしょうか?

特に解決方法の選定では、「どのような方法があるか?」、「その工事方法の利点とリスク」等、知りたい・気になる情報を得るのが難しいと思います。 多くの場合、管理会社等から紹介され、それをそのまま採用するケースが多いようです。
選定には、解決方法の特性や、他の方法と比較し、リスクと利点を知ることが大事です。
今回のコラムでは解決手法の種類とその特性について紹介致します。
 
多くの解決手法で用いられるのが「機械式立体駐車場を残したまま固定する」、「機械式立体駐車場を撤去し、埋め戻しを行う」、そして「機械式立体駐車場を撤去し、その上を鋼床材で蓋をする」の3つの工法が平面化工事の主な工法です。
 
その手法の種類と特性についてご紹介致します。


「機械式立体駐車場を残したまま固定する」
【 固定化工法A】
安価な工法ではあるが、車の入出庫は機械式と同じ寸法で、マンション住民の希望する大きい車が駐車できない。
・ 携帯電話、鍵等の小物を落としやすく、子供が立ち入ると危険な場合がある。
・技術基準の隙間(40㎜以内)があり、その隙間を全部埋めることは難しい
・工事事業者の技術力で極端に施工に差が出る
・根本的な対策にならない

【固定化工法B】
一部パレットを撤去。フレームと残ったパレットを固定し平面化する(屋内:水平三段式の場合)
 
・安価ではあるが、車の入出庫は機械式と同じ寸法で、マンション住民の希望する大きい車が駐車できない。
・工事事業者の技術力で極端に施工に差が出る
・技術基準の隙間(40㎜以内)があり、その隙間を全部埋めることは難しい
・根本的な対策にならない

<固定化工法>



<固定化工法について詳しくは第12回:機械式駐車場撤去・平面化工事「固定化」をご参照下さい>

「機械式立体駐車場を撤去し、埋め戻しを行う」
【埋め戻し工法A】
コンクリートピット構造体を撤去し、埋め戻す
・工事費が高くつくが理想の方法
 
【埋め戻し工法B】
・コンクリート構造体をそのままにし、埋め戻し
・直下型地震の時の被害のリスクが高まる
・軟弱地盤では、コンクリート構造体そのものが沈み、破損する危険が伴う
・屋内駐車場工事では使えない。埋め戻しに掛かる荷重は、設計荷重(設計時に設定した荷重)の10倍の荷重が建築構造物(マンション本体)にかかり、建築構造物が破損する可能性がある。
 
※ 役所によっては、埋め戻しは、駐車場の付附置義務違反と見なされ出来ない場合がある

<写真は埋め戻し工事により、駐車場敷地内の路面に亀裂が発生>

 
「機械式立体駐車場を撤去し、その上を鋼床材で蓋をする」…鋼製床式
【鋼製床式工法A】
鋼床材で蓋をする(柱在り)
・コンクリート構造体と鋼床板の構造体が同空間に存在する形となり、固有周期の全く異なる構造体は地震時ぶつかり合い、破損する
 
【鋼製床式工法B】
鋼床材で蓋をする(柱無し)…ノムラの「マルチステージ」
・コンクリート構造体で上面開放された脆弱部分を、四面拘束して一体化し地震に対抗できる「埋め戻し工法A」に次ぐ施工となる。


<鋼材床式(蓋)…ノムラの「マルチステージ」>

        
 

使われなくなった機械式立体駐車場の解決策は必ずしも、撤去ありきではありません。
いずれの方法も金銭面だけでは判断できず、マンションが立地している地質を考慮し、それぞれの手法には、メリット、デメリット等の特性があります。
工事方法を選定する際は、それぞれの方法(工事)の特性をちゃんと理解し、他の方法と比較した上でマンション管理組合自身が選択することが重要ではないかと思います。そのためには、マンション管理組合自身も「駐車場検討委員会・勉強会」等を立ち上げ、情報収集することも大事かと思います。
 
 
一級建築士・機械式立体駐車場開発者(代表取締役社長)
野村恭三