COLUM

機械式駐車場問題を考える

第36回:平面化の耐震性|ピット補強と建物の耐震強靭化

耐震性のポイント
・ 床材の厚み
・ 集中荷重分散
・ 耐震設計
・ 耐震設計|柱があるのはバランスが悪い設計

機械式駐車場平面化マルチステージの耐震性。直下型地震でも大丈夫なのか?使用する床材、耐震設計、機械式駐車場撤去後のピットの補強と建築物本体の強靭化について詳しく解説致します。

皆さん、こんにちは。

 
最近、弊社のコラムを読んで頂き平面化の相談・依頼が多く寄せられ、機械式駐車場の平面化の需要の高まりを切に実感しております。その中でも必ずと言って良いほど毎回受ける質問が、平面化後の安全性についてです。特に「直下型地震でも大丈夫なのか?」、「柱がなくても大丈夫なのか?」この2つの質問は何処に行っても聞かれます。ちなみに「柱がなくても大丈夫なのか?」の質問については、「柱があるのはバランスの悪い設計」であると先に述べさせて頂きます。
 
平面化後の安全性、特に地震対策・耐震性を確保するのは欠かせないポイントだと思います。今回のコラムではノムラの鋼製床「マルチステージ」の耐震性についてご紹介致します。マルチステージの耐震性の説明をするにあたり、使用する床材の厚みの必要性について触れ、マルチステージの特徴の一つである「車が入庫時(駐車中)に床板に掛かる集中荷重の分散」について解説致します。
また、マルチステージの耐震設計について、駐車場あるいはマンション本体の建築物を守る補強・強靭化についても詳しく解説致します。その中で柱の有無が左右するバランスの良い・悪い設計についてもご説明致します。
 
【耐震性…床材の厚み】
駐車場の特徴は入庫時と出庫時では、荷重の掛かり具合が全く違います。例えば、2.5トンの車が駐車中は2.5トンの荷重が掛かり、車がない場合は0トンです。このように車が駐車中と無い場合とでは、荷重変動が大きく、駐車場の床材への負担も大きいのです。しかも同じ車が入庫する車庫ならばタイヤの軌道が同じであるため、特定の床材が傷みます。
これらの対策の一環として、平面化時に使用する床材の厚みは最低でも3.2mm必要です。ちなみに、ノムラのマルチステージは、3.2mmの床材(C型鋼)を使用しております。
また、車重の重いEV車両等を駐車する事を想定するのであれば、床材の厚さは厚い方が良いでしょう。
 
【耐震性…集中荷重分散】
マルチステージはタイヤ部の床、前輪1枚後輪1枚に掛かった集中荷重を他の約25枚の床材が隣から隣へ順次持ち上げ分散します。集中荷重を分散する事で全体の耐久性があがり、マルチステージの耐用年数が上がります。
 


 
【耐震性…耐震設計】
マルチステージは柱がなくて「直下型地震の時大丈夫なのか?」とよく質問を受けます。建物は建物自体の重量や家具、人等の力を常に受けており、これらの荷重に対抗できるように設計されております。よって、上からの地震力を加えられる事によって、一気に建物が潰れることはありません。むしろ、上からの力を常時支えている柱や壁が、地震の横揺れで横からの力によって破壊される事により、上階の建物の重量を支えられなくなって建築物全体が倒壊するという壊れ方をします。
従って耐震設計では地震を「横揺れ」の力として捉えています。
「香川県土木部建築課建築指導室(2010)『耐震設計とは(ver.12)』P3」参照)
 
【耐震性…耐震設計|柱があるのはバランスが悪い設計】
ピット内に柱を2本(2本以上)も建てるのはバランスが悪い設計であると思われます。
通常、柱の間隔は5m程度が良く、また構造上でもバランスがいい設計です。建築基準法では積載荷重表に示すように、「住宅」や「駐車場」など一般的なものについて、建物や部屋の種類・用途別にその最小値を定めています。意外に思われるかもしれませんが、一般住宅の居室の荷重(家具や人等も含めた荷重)と比べて、車の荷重は同じ位か軽いくらいです。
ピット内に柱をむやみに建てると梁を小さくしたりし、バランスの悪い設計になります。その上、梁を小さくすると地震時に重要な水平耐力も下がります。
 ※マルチステージもコンクリートピットの形状によっては、ピットの壁側強度を持たせるために柱を設置する場合もあります。


 

<柱があるバランスの悪い設計>

 
平面化した時の荷重は、車1台あたり2500㎏、床面積は幅2.5m×奥行6m=15㎡あたりの積載荷重は2500㎏/15㎡=166kg <一般家屋居室の積載荷重180㎏ と一般家庭居室の積載荷重(タンス、テレビ、ベッド、ソファー、人等の荷重)と車1台の荷重は同じ位なのです。

<柱がないバランスの良い設計>

 
このことからも分かるように、平面化床は通常の住宅程度の柱間隔の5m位でいいと
思われます。ピット内に柱を2本も建てるのは「バランスが悪い」設計と思われます。
(「日本建築構造技術者協会(2005)『積載荷重』」参照)
 
マルチステージは梁が横方向に並べられた床材(短柱)で固定され、連続体となっており座屈しにくい構造になっております。


水平耐力は大きく、マルチステージだけでなくコンクリートピットの補強・建築物本体の水平耐力の強靭化に繋がります。直下型地震においてもマルチステージが強いのもこの水平耐力が大きいからです。
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村恭三