COLUM

機械式駐車場問題を考える

第30回:機械式駐車場入替工事と平面化工事の組み合わせ(後編)

「あるタワーマンション理事の機械式駐車場入替工事の奮闘記」

皆さんこんにちは、今回は前回(第29回コラム)に引き続き、「機械式駐車場入替工事と平面化工事の組み合わせ(後編)「あるタワーマンション理事の機械式駐車場入替工事の奮闘記」について、事例をご紹介したいと思います。 機械式駐車場入替工事と平面化工事を実施する際、管理組合と管理会社・駐車場メーカーとどのようなやり取りが行われたのか?管理会社・業者都合に陥らない、管理組合が交渉優位に至る交渉術、ポイントについて「あるタワーマンション理事の奮闘記」事例を元にご紹介致します。
 
 
タワーマンション理事からの相談内容
「3年後に機械式駐車場の全部入替工事を予定しているが、駐車場が余ってきたので一部平面化を検討している」とのことであった。
 
<計画概要>
駐車台数…約220台(パレット)
①ピット地下2段多段式昇降横行式…約200パレット
②ピット3段単純昇降式…18パレット
 
<当初の入替工事の計画案と概況>
・130台〜135台を残す計画
・全部入替工事で、現在設置したメーカーの見積金額が約3億2000万円とのこと
・他一社は見積を提出したが、他の会社は辞退するとのことであった。
 
 
私が、この状況を理事に「管理会社、駐車場メーカー等による『プライオリティの問題』である」と指摘したら理事はすぐに理解されました。
プライオリティの問題については第28回:「機械式駐車場入替工事はなぜ高いのか」をご参照ください)
 
私は「入替工事の主導権(プライオリティ)はメーカーにあるので、こちらの理事は苦労されているな」と推察しました。しばらくして、こちらの理事は新たな計画を思いつき、「入替工事の方法を変えた」とのことでした。
新たな計画案のポイントは、同機種を入れ替えるのではなく、別機種に入れ替えるというものです。
 
計画変更後の新計画案
【変更前】
ピット地下2段多段式昇降横行式を全部入替
【変更後】
ピット地下2段多段式昇降横行式をピット3段単純昇降式に変更
 
この新計画で最初に懸念されるのは、「地下2段多段式昇降横行式のピットにピット3段単純昇降式が設置できるか」ということでありましが、ピット空間に余裕があったため、
ピット3段単純昇降式の設置は可能でした。また、新基準の「ゲート設置」の要件もクリアしていました。
 
この計画変更により、既存機種(地下2段多段式昇降横行式)からの変更となり、プライオリティの問題は解決しました。
 
機械式駐車場業界の常識から、このような変更はまさに目からウロコものです。これにより、当初入替工事の見積提出を辞退していた会社が、見積を提出するようになりました。
 
計画変更後のメリット
地下2段多段式昇降横行式は駆動部が約5箇所に対して、ピット3段単純昇降式は1箇所になる。その為、入替工事費用が安くなる。また、平面化の台数も10台程度ですみます。これで当初の計画で億単位の費用が計上されましたが、かなり安くなると思います。
またメンテナンス費用も安くなるはずです。
 
この新たな計画を立案された理事の方は「マンションの準備金はいずれ枯渇する」と危惧されてありました。私も「機械式駐車場で、ここでも不必要な工事が行われようとしていたのか」と、今日の機械式駐車場問題を再度目の当たりにしました。マンション維持管理において一番重要なのは「生命に関わるインフラの維持」であると私共は考えております。今まで想定出来ない自然災害や生命に関わる重要なインフラ整備に準備金は充てるべきです。
さらにこちらの理事は、以前私共が掲載したコラム(第26回)「気づいた人が動く」という事を覚えておられました。この理事は実際にご自身で「動き」、新たに計画を「立案」され、このマンションのターニングポイントを守ったのであります。
 
 
 
一級建築士・機械式駐車場開発者
野村 恭三